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The Art Notes to the Swan of Tuonela トゥオネラの白鳥に捧ぐ鑑賞ノート
死の國トゥオネラには 黒い水が流れる川がめぐり その水辺を白鳥が 荘厳にゆっくりと進んでいる
DATE: 2006/03/24(金)   CATEGORY: 映画
《ブロークバック・マウンテン》
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街はずれの古書店で

埃をかむった古い詩集を手に取り

その 黴びた匂いの籠もる頁を一頁ずつ

めくってゆく

活版の印字も不揃いで 時間の刻み目も 

頁のシミの中に沈着している……

しかし そこに綴られた言葉の清冽

純真はどうだろう……?





詩のような映画だった

総じて アメリカンなものは苦手ですが

苦手なアメリカンが何処にもみあたらない 

アメリカンな映画でした

粗野な風情も 繊細な機微へと深まってゆき……

澄み切った風景と素朴に爪弾かれる音楽は

二人の男性の美しいこころそのもの・・・

嗚呼 美は人を傷つけます そして

いつまでも美を手放せない者は

世に言う幸福とは 無縁なのです




→ブロークバック・マウンテン


そういえば オースティン原作 

スネイプ先生も出演している『いつか晴れた日に』も

アン・リー監督ですね
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DATE: 2006/01/05(木)   CATEGORY: 映画
映画《オペラ座の怪人》



嗚呼 ひれ伏すべき 気高き闇の美学……

いまのいままで 交わらずに日々過ごしてきた鈍感さよ!

日本では どうしてもミュージカルを観る気になれないのですもの……

(しかし映画だって 1年遅れだ)



殊に 朽ちたオペラ座の時間が風と共に巻き戻って色づくオープニングは

打ち震えます 廟の退廃も……

ファントムの声は 腹心の友はいまひとつと言っていたけれども

わたしは好きです ロマンチックな上に 若々しくモダーンで

悲愴や悲哀も 孤独とともにせつなく響いてゆく……



嗚呼 いま現在 闇の貴公子に夢中……

日課の映画DVD鑑賞はしばらく 貴方のファントムが独占!



オペラ座・バレエ団が3年ぶりに来日します

→詳細はこちら

アンドリュー・ロイド=ウェバー翻案の《オペラ座の怪人》は

バレエにうってつけの演目だと思いませんか?

全幕もので どなたかつくってくださらないかしらん

生きていらっしゃれば ジョン・クランコ氏がきっと 

闇の静謐を濃厚に描いたに違いない

ファントムにはぜひ マニュエル・ルグリさんを!

きっと 誰よりも美しく 黒を纏うことのできる方だと思う



映画『エトワール』のDVD特典映像の中に

ジェレミー・ベランガールさんがオペラ座の怪人に扮した小品

《ランデヴー》が収録されています

音楽はビョーク

コンテンポラリー作品です

まぁまぁ かな……





DATE: 2005/09/15(木)   CATEGORY: 映画
準備はOK?
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『チョコレート工場の秘密』
ロアルド・ダール作
クェンティン・ブレイク絵
柳瀬尚紀訳
評論社



さぁ、素敵な《チャーリーとチョコレート工場》へ!


DATE: 2005/08/11(木)   CATEGORY: 映画
《ホワイトナイツ》……ダンスのある映画(1)
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監督:テイラー・ハックフォード

〈キャスト〉
ニコライ:ミハイル・バリシニコフ
レイモンド:グレゴリー・ハインズ
ダーリャ:イザベラ・ロッセリーニ
ガリーナ:ヘレン・ミレン

1985年公開





絶頂期のバリシニコフさんのダンスを見ることができる貴重な映画です。冷戦時代を背景にしている映画としては脚本が少々単純すぎる箇所もありますが、二人のダンサーの孤独や葛藤や相克が、ダンスを通じて絶妙に表現されています。しかもそのダンスは、旧ソ連の冷たい空気に見張られ、醒めた場所からほとばしる情熱を逆照射しているような淡々とした佇まいがあり、安っぽい感動に偏向していないダンスの扱いにとても好感が持てます。

ダンスの見所はまず、冒頭のバリシニコフさんによる《若者と死》。歴史に残る名演です! そしてタップダンス界のスター、ハインズさんによるガーシュイン《ボギーとベス》の一場面。バレエの身体とは違った、軸をつくらないダンスがバリシニコフさんと好対照をなしています。

ピルエット1回につき1ルーブル、という賭けで、11ルーブルを賭けたバリシニコフさんの11回連続ピルエットは、超絶技巧にもかかわらず、口笛でも吹くかのようにさりげなく、美しい自然現象のように見るものを圧倒します。お二人のデュエットは、身体の使い方が全く違うにもかかわらず、時折、互いの身体がひとつに解け合うかのような邂逅。そしてキーロフ劇場の誰もいない舞台で、ヘレン・ミレンさん扮するかつての恋人ガリーナを前に、反体制シンガー、ヴィソツキーの歌にあわせてバリシニコフさんが踊るシーンも、ミレンさんの泪と相俟って、美しい情熱の情景を描いています。

バレエ、モダン、コンテンポラリーのお好きな方は必見!

DATE: 2005/08/01(月)   CATEGORY: 映画
《BLUE》
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If I lose half my sight will my vision be halved?

視力が半減すると、ヴィジョンも半減するだろうか ……デレク・ジャーマン《BLUE》より抜粋




デレク・ジャーマン監督の遺作《BLUE》は、スクリーンにはただ〈BLUE〉の色彩のみが終始映し出されるという特異なものでした。通常の映画ではスクリーンというフレームは透明な(意識にのぼらない)存在ですが、ここではフレームがひとつの屹立した存在となって、わたし達の前にあらわれます。美しく静かに響く音楽、HIVの日々を綴ったナレーション、詩の朗読は、目前の〈BLUE〉のフレームから、過酷なまでに物語性を排除します。

デレク・ジャーマン監督にとって〈BLUE〉という色彩は、ひとつのドキュメンタリー、ひとつの紛れもない事実そのものだったのです……


DATE: 2005/07/06(水)   CATEGORY: 映画
《コーラス》
2005.7.6 シネスイッチ銀座



映画の舞台である〈池の底〉と名付けられた寄宿舎……中世の古城で撮影されたというその壁や床の質感と亜麻色の色調が、日記の一頁からはじまる追憶の物語をひっそりと映し出す。追憶とは、遠き日の記憶の平原に、うっすらと埃をかむったまま思い出される回想の劇。強すぎたり甘すぎたりするものも、淡くやさしく霞んでしずかに佇んでいる。

モランジュ役のジャン=バティスト・モニエ君の歌声は、揺れうごくこころの襞そのままに、霧の中の風景へと澄んでゆく、その透明に、一閃の意志が時折あらわれながら……



歌声は追憶の旋律となって、亜麻色の隅々まで響き渡ってゆく……





土曜日を待つ少年の羽音をやさしくつつむ亞麻色の霧





DATE: 2005/07/06(水)   CATEGORY: 映画
デレク・ジャーマンの庭
ダンジェネスは夏の光に輝いているときが最高に美しい。黒い家が黄金色に変わり、海岸近くまで長い影を伸ばす。太陽が原子力発電所の向こうに沈んだあとも、青白い小石はしばらくの間、光を反射していて、ピンクから白に色を変えていく。ここのたそがれは他と違う。完璧なまでの静寂の中で、ゆっくりと暮れていく。まるで疲れた時がまどろんでいるかのようである。

           ……デレク・ジャーマン『derek jarman's garden』より




きらきらと感受性の輝く歳のころ、出会ってしまった運命の映画群。そのひとつひとつに強い眼差しを投げかけては、スクリーンの奥へ到達できない落胆にこころを痛め、こころの整理整頓に苦心していた純真さの残る頃……今思い返せば、その落胆の中にこそ一条の光があり、その後をずっと照らし続けていてくれたのかもしれない。

来日された監督の行く先々に出没を重ねたのも、歳のころのなせる技。大正期の詩人たちの書物のあれこれを、控えめな無謀さをもって手渡した。





忘れもしない、秋かおる或る晴れた日の午後、自宅の郵便受に一通の封筒が届いていた。それは、イギリスの憂鬱を思わせるビリジアンのインクで、美しく宛名書きされた異国からの便りだった……

〈Derek Jarman〉のサインが添えられた、美しき二人の青年が優しく頬を寄せ合う《エンジェリック・カンヴァセーション》のポスターが一枚、遠き異国の微睡みと共に届いていたのだった。……美というものの、本当の深淵をまだよく知らぬ年端のものが、自分の存在を崩壊させてしまう程に妖しい美に初めて射抜かれたこの日……ひとりきりの小部屋でさめざめと泪したひとときを、昨日のことのように思い出します。

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デレク・ジャーマンから届いた封書の一部
(1987年10月8日LONDONの消印アリ/当時住んでいた国立市の懐かしい住所)






遠国の一介のファンに対する細やかなお心遣い……それが、終の棲家となったダンジェネスの、小さな庭に咲く花々への慈しみにかたちを変えて、彼の死後、遺書のような書物の中で出会うとは、誰が想像したでしょう……






いつまでもわたしのこころの中に、気高く咲き続ける一輪の青い花。





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